筋肉の量を決める要因として忘れがちなのが、食事からの蛋白質の摂取量だ。筋肉=肉(蛋白質)なので、いくら運動をしても蛋白質を十分に摂取していなければ筋肉は増えない。毎日の食事でどのくらいのたんぱく質を摂れば筋肉減少の予防に十分なのだろうか?
Curr Opin Clin Nutr Metab Care 12, 86-90, 2009
Dietary protein recommendations and the prevention of sarcopenia
3.蛋白質は三度の食事ごとに均等に摂るべし
私たちの通常の食事は、朝昼を簡単に済まして、夕食に副食(肉類)をたくさん食べるケースが多い。筋肉量維持の観点からみるて効率的な食べ方と言えるのだろうか。
340gの赤身牛肉(蛋白質90g、米国の試験なので体重75kgで計算している。体重60kgの人に換算すると蛋白質72g)を摂取したのちの蛋白合成量の増加の程度を測定したところ、その1/3量(体重60kgの人に換算すると蛋白質24g)を摂取した時と同程度であったことから、一度にある程度以上の蛋白質を摂取しても効果が増えない結果であった。
別の試験でも、健康な高齢者が高たんぱく食を10日間続けても筋肉蛋白合成が普通食摂取以上には増加せず、同様の結果が得られている。
筋肉蛋白質合成の増加には限度があるので、一度に蛋白質をたくさん摂っても意味がない。同じに摂取するなら、食事ごとに同じ量の蛋白質を、より望ましくは運動後にとる(運動によりインスリン抵抗性が解除されるので)のが良い結果が得られている。
4.運動とプロテイン摂取の併用は効果的か?
高齢者においても重量負荷運動の有効性は認められている。しかし、若年者とは異なり、高齢者における重量負荷運動とプロテイン摂取併用の効果は明確でない。とくに急性疾患や筋肉量が低下した高齢者での効果は不明確である。
蛋白質摂取量を1日0.9gおよび1.2/kg体重の2群に分けて12週間重量負荷運動を施したところ、筋力増加、脂肪量減少などは観察されたが、蛋白摂取量が違っても効果の違いは認められなかった。
また、運動後に蛋白質を0.72gおよび1.53g/kg体重摂取させる試験でも、蛋白摂取量の違っても筋肉増加量は同程度であった。
運動すると筋肉での蛋白合成が増えるので、運動後に蛋白質を多量に摂るのが有効のような気がするが、高齢者では運動後においても筋蛋白合成量には上限があって、一定量以上の蛋白質を一度に摂取してもその上限以上には増えないようである。